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『上達の秘訣は、ひたすら枚数を折ること』 PL病院泌尿器科 副部長 青山真人先生インタビュー

2023.03.24
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KOTOBUKI Medicalインタビュー企画第一弾として、弊社の人気製品『ラパロトレーニングバインダー』の開発者でもいらっしゃる、PL病院の青山先生にご来社いただきました。

ラパロトレーニングをする上での日々の心がけや医師を志したきっかけなど、和やかな雰囲気の中たっぷりとお話を伺いました。

 

 

 


 

1.本日は、弊社まで足をお運びいただきありがとうございます。2022年12月15日にジョンソン・エンド・ジョンソンインスティテュート東京にて行われた「第一回神の手チャレンジ全国(世界)大会」にて、決勝進出されたとお伺いしました。おめでとうございます!ぜひ、大会の様子をお聞かせください。

 

「神の手チャレンジ全国大会」参加の条件は、簡単に言うと”モニターを見ながら鉗子を用いて折り鶴を正確にかつ7分以内に折れること”です。審美性とタイム双方に配慮が必要で、”折り鶴の羽の隙間が4mmを超えた場合は、タイムに10秒加算される”などのルールがあります。私は個人戦に参加しました。

 

大会では、7名で構成されるグループが4つあり、各グループのトップが決勝に進む勝ち抜き形式で、最終的に私は大会4位でした。海外からは、ベトナムの先生とメキシコの先生がオンラインで参加されていました。

 

※神の手チャレンジとは・・・腹腔鏡手術のトレーニングを目的に、鉗子を用いて折り鶴を作るスピードを競う競技。日本医科大学産婦人科 准教授、市川 雅男医師を中心に、YouTube上で2015年に始まった。現在ではFacebook上にコミュニティ「Kaminote challenge」があり、参加者は楽しみながら日々技を磨いている。

 

神の手チャレンジ全国大会当日の様子。前列中央、神の手チャレンジ主催者市川雅男先生、最前列右端が青山先生。

 

 


 

2.決勝に進んだ時のお気持ちは?

決勝進出が目標だったので嬉しかったですね。決勝に進めば、当日取材に来ていたNHKの番組にも映れるかなという気持ちもありました。来年もぜひ参加して、1位を狙えたら良いなと思っています。

 

 


 

3.腹腔鏡手術の練習方法において、折り鶴トレーニング(=モニターを見ながら鉗子を用いてドライボックス内で鶴を折ること)は最近注目を浴びている方法だと思いますが、青山先生はどれくらいのご経験がありますか?また、折り鶴上達の秘訣があれば教えてください。

折り鶴のトレーニングは、2021年の春から始めました。

上達の秘訣は・・・ひたすら枚数を折ることです(笑)今までに、約1万2千羽ほど折っています。1日約30羽程度折る時間を作れれば、上達は約束されているのではと思います。

 

 

 


 

4.2年にも満たない短い期間でそれだけの数を折り上げるのは大変なことだと思います。普段どのように折り鶴を折っていますか?また、どのような道具を使っていますか?

 

①朝出勤してから、②昼休みに、③業務が終わってから、④帰宅後、と4回程度に分けて折っています。

折り鶴を作るときは力がかかるので、丈夫で安定しているラパトレKと、フリーアームカメラスタンドを使っています。

 

 

 


 

5.2015年にグッドデザインアワードを受賞した【ラパロトレーニングバインダー】の開発において、開発経緯や、印象的だった点をお聞かせください。

 

大学院の時に医療機器開発のプロジェクト研究を行っていました。

最終目標は製品化でしたが、基礎研究から製品化まで辿り着くのは、実は非常に大変なことなんです。結局そのプロジェクトでは製品化までは残念ながら至りませんでした。

 

そのようなバックグラウンドがあったので、アイディアを温めていたラパロトレーニングバインダー開発の話が実現した時は嬉しかったですね。

ある医師の紹介で高山さんと出会ったのですが、出会ってわずか半年で製品化できたのも、熱意があったからだと思います。

2013年11月に初めてお会いして、2014年1月には試作完成、2014年5月には販売を開始しました。

販売開始後の反応も良く、自分が欲しいなと思っていたものをちゃんと買ってくれる人がいるということに感動したのを覚えています。

 

 

 


 

6.既存のドライボックスで困っていた点は?

持ち運びが難しく、個人で購入するには手が出しにくい価格設定が問題点でした。また、市販品だと映像クオリティが悪く、トレーニングに向かないものも多かった。ラパロトレーニングバインダーは、そういった問題点を全部解消する製品だと思っています。

 

 


 

7.2014年に販売を開始した【ラパロトレーニングバインダー】は累計販売台数1600台(2022年9月時点)となり、腹腔鏡トレーニング製品というニッチなカテゴリにおいて、大型ヒット製品であるといえます。人気を博したポイントはなんだったとお考えでしょうか。

 

デザイン性がまず第一にあげられます。第二に、多様なトレーニングポジションの設定が可能であること。

私自身が作っていた試作とは大きく変わって、高山さんが作った試作品はポート穴がどこからでも刺せる仕様になっていました。

 

また、ラパロトレーニングバインダーはポートを刺す部分(腹壁)が透明になっている点もポイントです。

モニターを通さず直視で練習をできる仕様になっていたので、初心者・若手の先生に対して、トレーニングへの障壁を下げたと思います。

 

当時市場にあったドライボックスは透明ではなく、直視で練習ができなかったので画期的でしたね。

 

 

 


8.泌尿器科医を目指された経緯をお聞かせください。

 

大学生の時に遊び倒したせいか、卒業まで8年かかったんです(笑)

そのため、内科や消化器外科など、王道の診療科に進むのは厳しいかなと感じていました。

範囲が狭く専門性を磨ける科に進みたいと考えたのですが、専門を決めるタイミングに父が前立腺がんの末期だったこともあって、泌尿器科を選択しました。

 

父からは直接その選択について何か言われたことはなかったのですが、「私の病気を治すために泌尿器科医になってくれた」と周囲の人に自慢していたと聞いています。

 

 


 

9.とても印象的なエピソード、ありがとうございます。つぎに、泌尿器科医としてのやりがいについてお聞かせください。

 

前立腺治療がライフワークとなっており、泌尿器科医としてのやりがいを強く感じます。

腹腔鏡をする前は、前立腺のレーザー手術を主にやっていたのですが、徐々に前立腺がんも手掛けるようになり、腹腔鏡手術に本腰を入れたいと思ったことが、神の手チャレンジに参加したきっかけでもあります。

 

 


 

10.現在、どのような取り組みをされていますか?

 

前立腺の全摘手術を後輩や若手医師にどのように伝えられるかということに力を入れています。

教科書などはありますが、それに加えて実戦的なトレーニングメソッドを伝えられたら嬉しいと思っています。

そのためにトレーニング用のモデル開発にも着手しました。それを使ってトレーニングすれば、自然とスキルが身につくようになるモデルを作りたいと考えています。

 

 


 

11.それはどのようなモデルですか?

 

VTTで前立腺モデルを開発しています。VTTは、電気メスなど臨床に使う実際の器具を使える点も良いですね。

前立腺肥大症で水蒸気を使った治療手技の評価をするためにもVTTは、有用でした。

生体や食用肉では再現できないことが、VTTでは再現できる点も多く驚いています。可能性のある素材だと感じますね。

 

 


 

12.開発に即して難しいと感じる点はありますか?

 

・・・・大阪と距離があることだけが難しい(笑)。

VTT肺モデルや胆嚢モデル、開発中の胃や子宮モデルを見たので、

VTTで前立腺の解剖学的な部分を再現する点に関して不安はありません。

 

 

 


 

13.手術支援ロボットのマーケットが拡大しています。ロボットを使った手術が一般的になるにつれ、どのようなトレーニングが必要になるとお考えでしょうか。

 

ロボット手術の時も、助手の先生が一人患者さんの横につくんです。

その先生は腹腔鏡の鉗子を使って操作をするので、腹腔鏡トレーニングは今後も必要です。腹腔鏡のトレーニングをすればロボット手術の練習にもなるので、今まで以上に腹腔鏡トレーニングは重要だと思います。

 

 


 

14.今後の展望をお聞かせください。

 

来年50歳になります。現役としてもまだまだ頑張りたいですが、教育にも力を入れていきたいですね。

上の世代の先生から受け継いだノウハウを若い世代に繋いでいければと。

コロナの影響で対面で教えられる機会が減っていますが、今後状況が良くなれば、若い先生達を上手な先生に繋げるような活動もしていきたいです。

 

 

 


 

15.さいごに、医学生や若手医師へのメッセージをお願いいたします。

 

手術の分野は、”どれだけ手術に触れるか”ということが重要です。上手い先生の手術はもちろん、まだ上手ではない、自分と同レベルの先生の手術も含めて、沢山見て、沢山練習して、本を読んで、と繰り返していけば絶対にスキルアップしていきます。スキルアップすれば自分の仕事が好きになり楽しくなる。ぜひ、練習が好きな先生になってほしいですね。

 

 


 

番外編
おすすめの医療漫画やドラマはありますか?またそういった創作物で、リアルではないと感じる部分はありますか?

「医龍」とか好きですね。医療ドラマでは、海外のものですが「ER」。実際の現場で役立つシーンもあったりします。リアリティに関しては、監修が必ずついていると思うので、大きな違和感を感じたことはありません。

 

 

お忙しい中インタビューにご協力いただきありがとうございました。VTT前立腺モデルの完成を楽しみにしております!

 

 

<青山 真人先生 プロフィール>

PL病院泌尿器科 副部長

1973年富田林生まれ(PL病院生まれ)。2001年大阪市立大学医学部卒。 同年、大阪市立大学泌尿器科入局。その後PL病院での勤務を経て、2008年、医学博士号取得。大阪市立総合医療センター医長、大阪市立大学泌尿器科病院講師などを務め、2021年4月より現職。2022年4月よりPL病院尿路結石センター長兼任。

趣味は陸上競技観戦、オーケストラ・ブラスバンドコンサート鑑賞、校庭芝生化関連作業のほか、折り鶴トレーニング。

 

青山先生が緑地化を手掛けた、PL学園小学校の美しい芝生。根気強いケアが必要な芝生緑地化と手術トレーニングには、通ずるものがあるのかも知れない。

 

 

 

 

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