『創意工夫と継続することがスキルアップの要』長崎大学小児外科 チーム長 山根裕介先生インタビュー(後半)
KOTOBUKI Medicalインタビュー企画第二弾として、長崎大学小児外科チーム長の山根裕介先生にご来社いただき、『山根塾』など外科教育に関する取り組みや、医師として、また父としての日々の心がけなどについてお話を伺いました。
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5.現在始めようとしている新しい取り組みはありますか?なぜそれを始めようと思ったのですか?
まず、”保育所・山根”は本気で取り組みたいと思ってます。子どもを持つ後輩のキャリア育成をバックアップしたいので、山根家でいつでも後輩の子ども達をあずかれる体制にしたいですね。
次に、取り組みというか、作りたいマインドセットがあって。
僕の子どもは二人とも男の子なんですが、将来二人とも結婚したとして、彼らのパートナーと子ども達が足を運びやすい実家にするための意識づくりをしていきたいですね。
夫婦間で、女性側の実家の方が帰りやすくて、男性側の実家は忌避される傾向ってのはどうしてもあると思うんですが、それを回避したくて。
息子達のパートナーと孫達がまるで”お母さん側の実家”のようにくつろげる雰囲気にしたいですね。
「帰ってこい帰ってこい」と言う割に、実際に帰省した孫達と遊ばないパターンって多いと思うんです。
そうじゃなく、孫に本気で取り組んで一緒にめちゃ遊ぶおじいちゃんになるのが将来の目標です(笑)
そのために体力づくりは継続していきたいです。
また、息子のパートナーになる女性は、義理の娘、言ってみれば他人じゃないですか。
尊重するという意味で、口やかましく言わず、境界線をきちんと設けたいと考えています。
後輩の育成に関しても、出来ていないタスクに対して口やかましく指摘するのではなくて、まずは相手の事情をおもんぱかることを念頭においています。
あとは、本の出版をしようと企画を始めたばかりです。今まで共著の経験はあるんですが、単独で出すのは初めてなので楽しみです。読者層は医学生と研修生をイメージして、読んだら外科に進みたくなる手技のハウツーになる予定です。
いずれ42キロのフルマラソンにもトライしたいですね。
6時間走り続ける経験が仕事に対しても良い影響を与えるかもと考えています。
6.医師不足、特に外科医不足が近年話題に上ることが多いと感じます。原因をどのように分析されますか?また、どんな解決策があると思われますか?
まあなりたくないでしょう、大変ですから。
手術が好きっていう純粋な気持ちがないと出来ないです。
ワークライフバランスの観点からは良くないのかも知れませんが、定時で必ず帰りたい人は、現状ではどうしても難しいかも知れない。
新卒の医師で外科に進むのは現在1割くらいだと思うんですが、時代に即して少しずつ働き方を変えて行く、例えば男性医師が家事育児にもっと参画すれば、女性医師が働きやすくなり、結果的に女性医師が増えるかも知れない。
そして外科医が増えれば、外科に進むことの障壁がもっと下がるかも知れない。
そういった期待を持っています。
7.10年後のご自身の姿を教えてください。
一小児外科医としての価値は下がっていくのが必然なので、外科教育者としての価値を高めていく必要があると思っています。
老害にならないために、若い世代が自律型のチームを組織できる環境を作るためのサポートをしたいですね。
あとは次男がその頃まだ高校生なので、次男がどこの高校に行くかによりますね。
もし彼が県外に出てたら、妻と二人になっている可能性があって、そうなると新婚以来の二人暮らしですね。
その頃は新婚じゃなく戦友みたいな感じになってるかもですが。
彼女はゲームが好きで、今だとスプラトゥーンとかやって、僕はその横で、読書や去年から始めた詰将棋をしてたりするんですが、10年後もそんな感じかも知れません。
あとは、山根塾を本当の塾みたいにしたいという夢もあります。
塾舎があって、実際にそこで受講も出来るし、オンラインで受けたり、オンデマンドで学んだりという施設を作りたい。
今実際の塾もそんな感じでやっていますもんね。時々一般開放して、高校生にオープン講座をしたりも良いですね。
高山: リアル山根塾、ぜひ弊社の中に分校を作っていただきたいですね。配信スタジオも準備したいです。
分校じゃなくて、KMを本校にしてもいいかも知れない(笑)
今民間医局さんが、外科教育を系統だててやっていこうという取り組みをしていて。
そういった取り組みによって、系統だてて行っていく外科教育が一般化して、それが学校だとすると、それとは別にもっとニッチなスキルを教える塾も必要になってくる。その塾をぜひ実現させたいですね。
オンラインでの学習はもちろん重要かつ有用ですが、オンラインでの学びの最後には必ずリアルでのトレーニングが必要になってきます。
オンラインでのトレーニング=素振り、オンサイトでのトレーニング=バッティングセンター、実際の手術=試合だとしたら、リアル山根塾は試合に臨む前にたっぷりと知識と経験を積めるバッティングセンターのような場所にしたいです。
8.最後に、医学生や若手医師へのメッセージをお願いいたします。
少し厳しいことを言ってしまうかも知れないんですが、今の若い世代は怒られ慣れていない方が多い印象があります。
怒られることや周囲からの反発を恐れず、ぜひ色々とチャレンジしていってもらいたいですね。
家庭を持っている方は、仕事だけでなくしっかりと家庭にも取り組んで、家庭がない方は一人暮らしの生活力を上げていくことが大事だなと思います。
家庭の運営はマルチタスクですから、タイムスケジュールをしっかり組んで回していくことは医療の現場でも必ず生きてきます。
家庭にしっかりと取り組まない状況は仕事をしていないことと同義かも知れません。
アウトプットも非常に大事ですね。
学んだことは同僚や後輩に伝え、学会で発表したりと外部に発信していくことで定着します。
いざアウトプットしようとすると、意外と分かっていなかったことを再発見したりするんですよね。
あとは伝える力を鍛えること。「美味しい」とか「ありがとう」とか。
こっそり妻に水足されたり、次男の宿題の作文に味噌汁が濃いと書かれたりするけれど(笑)
それにめげず日々感謝の気持ちを伝えることを心がけています。
手術は野球と違って明確なスキル習得の目標を立てづらいので、トレーニング方法を自分で考える力と、あとは継続することが大事です。
日々の業務に忙殺されて、中々スキルアップのための時間を取れない先生も多いと思います。
日常の中にトレーニング時間をルーチンとして組み込んでいってほしいですね。
山根 裕介(やまね ゆうすけ)先生 ご所属 長崎大学病院腫瘍外科 長崎大学小児外科チーム長 ご専門 小児外科 外科教育 プロフィール 2005年長崎大医学部卒。07年同大病院腫瘍外科に入局後、大分県立病院、佐世保市総合医療センターを経て、09年より国立成育医療研究センターで小児外科を専従。11年に佐世保市総合医療センター、13年より長崎大病院腫瘍外科に戻り小児外科を専従。18年より現職。趣味は将棋、競馬、手術、外科教育。
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